チレコドン属、バニキュラータス阿房宮。

年末年始に初めてアクアテラリウムにチャレンジしたのですが我ながらうまくできたので和風な風貌の阿房宮さんと一枚。

しかし悔しいのは写真では10分の1も美しさを表現できないことです。
滝が、川のせせらぎが、水の滴る音色が、どれも写真という静止した一枚で表現するには限界があります。

10月中頃。
私は植物のアレンジショップでアクアテラリウムに出会った。
その小さな空間に溢れる癒し。
マイナスイオンこの上なし。
私は一瞬にしてその空間の虜になった。
この空間を、ぜひ我が家にも。

お値段を見ると30cm×20cmの水槽で3〜4万円。
べらぼうに高い。坪単20万円くらいじゃん。
場所によっては家を買える単価じゃん。
そのくらいにこの小さな空間を作るのに材料費と工数が必要なんだと。

悶々とした気持ちで店を出た夜、私は夢を見た。
私は小人になってアクアテラリウムの川の畔で昼寝をしている。
するとそこに妖精が現れる。
「アクアテラリウム作りなさい」


11月下旬。
アクアテラリウムへの憧れは増していた。
私の中でのアクアテラリウムでは雫一粒一粒が日光を浴びて七色に輝き、
妖精たちが戯れていた。
よく見ると妖精たちの中にジェニファーもいた。
そう、小学生のときに好きだった中村さんだ。
大好きだったが親の都合で海外に引っ越しすることになって離れ離れになり、会わない間に私の中で成長し、グラマラスで絶世の美女、ブルーな瞳にブロンドヘアな彼女。
そう、私は彼女のことをジェニファーと呼ぶことにした。
中学生になり、日本に帰ってきた私は中村さんと同姓同名で同じ誕生日で同じ場所にホクロのある女性に「久しぶり！」と声をかけられたが、初対面の女性だった。
彼女の瞳は少しもブルーじゃなかったし、絶世の美女どころか、少しだけゴリラ顔をしていた。
もちろん、自分を戒めた。
ゴリラさんに失礼じゃないか！
ゴリラの体脂肪率は10%くらいのキレッキレグラマラスボディーだし、一日何回も毛づくろいをするオシャレさんだ！

しかしジェニファーにその後出会うことはなかった。。。。
そんなジェニファーがアクアテラリウムで戯れているのだ！

12月中頃。
私は決心した。
自作でアクアテラリウムを作るのだと。
年末年始の休みに入る前に入念な設計図を描いた。
妖精たちの戯れを一目見たい一心で。
ネットで石を買うとばかみたいに高いので、その辺に落ちている石っころを拾った。
一つ一つ、ジェニファーとの想いを拾い集めるように、拾った。
100均で工具やカラーボードを揃えた。
さあ、準備完了だ。

そして仕事納めとなった瞬間、私は狂ったようにアクアテラリウム制作に没頭した。
カラーボードや発泡スチロールをプラモデルのように組み立て、石を接着剤で貼り付け土台を作った。
20時間以上かけてアクアテラリウムを完成させたのである。

私は出来上がったアクアテラリウムを隅々まで満足気に眺めていたが、何かが足りない。
そう、ジェニファーだ。
私は泣きじゃなくりながらジェニファーを探したがどこを探してもジェニファーが戯れていないのだ。
ただただ滝が美しく、川のせせらぎに心落ち着き、水の滴る音色に耳傾けるだけの空間。
アクアテラリウム、否、この空間をもはやジェニファーと呼ぼう。


娘が完成したアクアテラリウムを見て、
「わー！お店のよりぜんぜん綺麗！本物の川が流れているみたいだね！」
ホロリと頬を滴る感触。良い娘に育った。

職場の同僚にも画像をメールで送った。
「水槽に苔映えたんすか？」
もう。。。。仕事手伝ってあげないから！