猩々袴(ショウジョウバカマ)

シュロソウ科ジョウジョウバカマ属の多年草。山地の湿った場所に生える。平地から高山まで分布するので花期が長く、３月頃から咲きだし、高山では７月頃が最盛期。６枚の花被片(かひへん💬花弁と萼片の区別がないとき、両者をまとめて花被片と呼ぶ)をもつ花が１０個前後集まって花のように見える。花色は変化が多く赤系や紫系、白色もある。放射状に広がる葉は常緑で、光沢と厚みがある。葉先が地面につくと芽と根を出して子苗をつくる栄養繁殖をすることもある。果実は朔果で、１つの果実が３つに大きくくびれ、成熟するとそれぞれが２裂して種子を出す。種子は長さ６㎜ほどの線状楕円形。

紅色の花を能楽に登場する怪物、猩々の赤毛に見立て、放射状に出る葉が袴のようなのでこの名がある。なお、中国でいう猩々とは、猿に似た、顔が赤くて酒好きの想像上の動物を指す。その猩々が不老長寿の福酒を人間に授けるという中国の伝説をもとにして能楽の猩々がつくられた。紅色の花が、漢字で猩々と書くオランウータンの赤い顔に似ているからついた名前との説もある。

出典『四季の野の花図鑑』『春の野草』『草木の種子と果実』