エケベリア属、マザリン。

なぜ白黒なのか。
昔の白黒の写真っていいなって思うのです。
写真では表現されていない色合いや季節感、そういったものを、見る人々が想像で補う世界。

私は思うのです。
テクノロジーの進化は、人々の想像力を奪っているんじゃないかと。

考えてもみてください。

今、恋心を抱く彼女と話したいと思ったとして、現在であれば、スマホを片手に、次の瞬間、なんの躊躇いもなく彼女に電話をすればいい。
スマホなんてなかった時代、家電に電話をしなきゃならない。
彼女は家にいるだろうか、もしも彼女以外の家族が電話に出たらなんと言って繋いでもらったら良いだろうか。

一つの挙動を起こすのに、相手の状況を考え、不安と期待を抱きながら、電話一本かけるのにモジモジするような。
そして鮮明な記憶となって残る。
無駄にも思えるような不安と期待が入り混じったその時間が、その感情が、脳内の海馬を刺激し、忘れない思い出となるのである。

そう、テクノロジーは想像力を奪うに留まらず、思い出さえも作らせない。

そして、インターネットの普及がさらに記憶することへの意味性を無くしている。
必要なことはGoogle先生で検索することで何でも教えてくれる。
よっぽど専門性の高い情報でない限り、わざわざ図書館に行って調べるなんてことはしなくていいのだ。
記憶することよりも必要な情報をインターネット上で検索し、たしからしい情報を取捨選択し、すぐ様扱うためのスキルが重要視されている。

そういえば「何時に待ち合わせ」なんて概念はほとんどなくなりましたね。
中学生のとき、吉祥寺駅井の頭口の改札前で女の子と待ち合わせをして、15分くらい待ったのを未だに覚えている。
寝坊したのだろうか、事故にでもあったのだろうか、嫌われちゃったのかな、様々なことを想像したことも含めて記憶として残っている。
15分間、相手を想うからこそ、より愛おしく感じるのかもしれませんね。
「電車一本乗り遅れたから、時刻表通りなら14時15分くらいには着くかな。てきとーに時間潰しといて」というLINEのメッセージからは何の情緒も生まれません。

テクノロジーは「利便性」という意味で大きく我々の社会を発展させてくれるし、もはやそれなしには生きていけない。
しかしそのことによる弊害がきっとあるんだということも忘れてはいけないと思うのです。

私なんて昔のことは良く覚えるのに、最近はめっきり思い出せない。
新しいJ-POPや、最近の芸能人、ぜんぜん思い出せない。
全部テクノロジーの進化のせいです。

90代後半のうちのおばあちゃんなんてさっき食べたご飯さえ覚えていない。
全部テクノロジーのせいです。