今日のお花～馬酔木～

40年かけて、こんなに大きくなりました😺


『ひいおばあちゃんとプリン』

小さな頃、
私が風邪を引いて学校を休むと
ひいおばあちゃんがやってきます。
出勤してゆくみんなと入れ替わるように、
手押し車をゆっくり押しながらやってくるひいおばあちゃん。

いわゆる『痴呆』がはじまっていたおばあちゃんは、
仕事がないと、プイとどこかへ行ってしまうので
皆でおばあちゃんに家事をお願いします。
『草刈りとお洗濯畳むのよろしくね』
おばあちゃんは、ハイハイと嬉しそうにテキパキとこなします。

90度まで曲がった腰の、小さなおばあちゃんは、
ザッザッと小気味良く、休むことなく草を刈ってゆきます。
その音を、熱でぼんやりした頭で遠く聞きながら、うとうととするのが私のお薬でした。

3時になると、お昼に様子を見に帰った母が用意したプリンを二人で食べます。

プリンを一口たべたおばあちゃんは、
びっくりした顔で
『これは、なんてゆうもんね？』
「プリンだよ」
『なんとまぁ～プリンね、初めて食べた！』
「おばあちゃん、前も食べたよ(笑)」
皺に埋もれた細い目を、なお一層細くしてニコニコとプリンを食べるおばあちゃん。

おばあちゃんは、
自分の大好物のプリンをいつも知らない。

それでも、みんなおばあちゃんとこの会話がしたくて、プリンを用意するのです。

働き者で、たくさんの子供を、育て上げたおばあちゃん。
墓標をみると、
小さい頃に病気で亡くなった子や
馬車にひかれて亡くなった子の名前がありました。
地蔵菩薩のように穏やかな顔の下にはどんな悲しみがあったのでしょう。

大きな病気もせず、大好物のプリンを食べて100才を越えるほど長生きしたおばあちゃん。

おばあちゃんの娘である、私の祖母が亡くなったことは、理解できてないようでした。

おばあちゃんはもう二度と
我が子を亡くす悲しみを
味わうことはなかったのです。