猿尾枷。猿麻桛とも。一週間前登った長野県の入笠山で見たのを思い出した。ネットの山野草図鑑では作者がここのサルオガセはいままで見た中で最も長く垂れ下がっていたとある。たしかに蚊帳（かや）が枝にひと張りぶらさげてあるようだった。

だが、世界は広い。十数年前、シアトルのオリンピック国立公園で見たサルオガセは半端ないほどすごかった。木々もすべて苔まみれで、枝ごとにサルオガセがレースのカーテンのように見事に下がっていた。光が差すとオーガンジーのような質感も出て、ゴージャスな別世界に変わった。落ちていたサルオガセをトレンチコートのように羽織って撮影した。

サルオガセは葉緑素をもっていて、光合成をする。霧の水分を吸収することから霧藻と美しい名前も付けられている。しかも食べられるようだが、うまくないらしい。絶品であれば絶滅するから、これぞサルオガセの生存戦略。