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ぼけ,sora の物語,瑠璃の冬の物語の投稿画像
so.raさんのぼけ,sora の物語,瑠璃の冬の物語の投稿画像
ぼけ
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so.ra
2021/02/28
【瑠璃の冬の物語】その10
父が亡くなって、ひっそりとした家のなかだったが、赤ん坊も元気に育ち、瑠璃と弥彦との会話も少しずつ増えていった。もう少しで乳をもらいに行くのも終わり、そんな思いが二人の気持ちを明るくしていた。
そんなある日、乳をもらいに言った日に、珍しく梅が瑠璃に優しく話しかけてきた。
「瑠璃さん、あんたの乳が出ないのは、栄養が足りないからだろう。実は私が知ってる秘密の薬草があるんだよ。家のものだけの秘密だから、今まで言えなかったけど、この頃はあんたの子もたくさん乳を飲むようになって、わたしの子の分の乳も足りなくてね。そろそろあんたも自分の乳で子供を養えたらいい頃さ。」
「そうだったんですね。そんなことも知らずにすっかり甘えておりました。その薬草はどこにあるか教えていただけないでしょうか」瑠璃が訪ねた。
「特別に連れてってやるよ。だけど、絶対に人には言わないことだよ。弥彦さんにもだよ。何せ秘密の薬草だからね。」
瑠璃が承知すると、明日の朝早く、日の出前にかごを持っておいでと話がまとまり、まだ寝ている弥彦と赤ん坊をおいて、瑠璃はそっと家を出た。
梅さんの家につくと、外で待っていた梅さんが瑠璃の姿を見るなり、話もせずに足早に進んでいく。そのあとを駆けるように追いかけ、やがて村外れの崖の縁に出た。
そこは、深い沢の上の切り立った崖で、めったに人も訪れないところだった。その場所につくと、やっと梅が口を開いてこういった。
「この崖を少し降りた所に、薬草が生えているんたよ。ほら見てごらん、少しだけ葉っぱが見えるだろう。」
そういわれて恐る恐る覗いてみたが、それらしい葉っぱは見えなかった。
「あぁ、瑠璃さん、無理しちゃ危ないよ。ここに蔦を持って来たから、私が支えてるから、身軽なあんたが降りてって、あの薬草を二人分取ってきてくれないかね。私はこの通り太ってて、とても無理なんだよ」
この数日の雨で水かさが増した水音が谷底からゴーゴーと響いていた。冷たい風が吹き上げて、瑠璃も身震いするような、険しい崖だった。けれど、子供の乳の世話になった梅のためにも、子供のためにも薬草を取ってこようと、意を決して瑠璃は頷いた。
「いいわ。梅さん。私が降りて二人分の薬草をとってくるわね。どうぞしっかり蔦を支えていてね」
そういうと、瑠璃は草履を脱いで、梅の持つ蔦の端を腰に結んで、岩につかまりながら谷底に降りていった。
険しい崖をかなり降りてみたけれど、梅の言う薬草も見当たらず、瑠璃は梅に向かって声をあげた
「梅さん、薬草が見つからないわ。もう少し下の方かしら?」
すると、突然梅が笑い出してこう言った。
「嘘だよ。薬草なんて、真っ赤な嘘さ。あんたが邪魔だったんだよ。ここでおさらばさ!」
そう言うと、持っていた蔦を手離した。
瑠璃はたちまち崖を落ちたが、途中に生えていた小さな木にやっと片手で捕まった。
「梅さん!後生だから助けて!お願い、あなたに何かしたのなら償いをするから、どうぞ助けて!」瑠璃は崖の上の梅に叫んだ。
「あんたにわかるもんかね。あんたが来るようになってから、権蔵さんは私を蔑むような目で見るようになったのさ。それなのに、あんたが来る時間になるとそわそわして、身づくろいしだすんだ。口を開けばあんたの話ばかりさ。私が乳をやってる間あんたが権蔵さんに抱かれてる。毎日、私がどんな思いでいたかわかるかい。それなのに憎いあんたの子に、毎日毎日乳をやる私の苦しみがあんたにわかるかい。
あんたが来なけりゃ、私は幸せだったんだ!あんたなんか、死んじまえばいいんだー!!」
梅の叫びとともに、大きな岩が瑠璃の上に降ってきた。
その一つが瑠璃の頭にあたり、岩と一緒に、瑠璃は激しい谷の流れに落ちていった。
続く
🌸よろしかったら、物語の一話【瑠璃の物語】二話【瑠璃の冬の物語】は下のタグからご覧下さいね。
猫
2021/02/28
いつも写真がとても美しい❗教えて下さいませ❗
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1
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パトリシア
2021/02/28
so.raさん
毎回、おはなしの流れに引き込まれます。人の内奥に踏み込んだお話ですね‥
生きることの厳しさ悲しさを
痛みをもってお読みしています。
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1
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so.ra
2021/02/28
@猫
さん
投稿にあった写真になるように、題材を探すのてすが、携帯pic なので、もっとズームとか編集できたらなって思います。コメントを有り難うございました😆💕✨
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0
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so.ra
2021/02/28
@パトリシア
さん
読んでくださって、有り難うございます。人の心の難しさ、生きていくことの厳しさ、そのなかにも人生の贈り物があることを、書いていきたいと思ってます。コメントを有り難うございました😆💕✨
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1
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so.ra
大切なものを 預かっているよ いつでも取りに戻っておいで💖 たくさんの陽だまりの花たちと あなたをお待ちしています😊🍀 2021年12月14日 わたしの詩を、書きとめていただいて、とっても嬉しくて、今日から作家ですと名乗ることにしました🤗みんなに愛と勇気と癒しを贈る人になれるよう頑張ります😊
キーワード
sora の物語
瑠璃の冬の物語
瑠璃の物語
植物
ぼけ
父が亡くなって、ひっそりとした家のなかだったが、赤ん坊も元気に育ち、瑠璃と弥彦との会話も少しずつ増えていった。もう少しで乳をもらいに行くのも終わり、そんな思いが二人の気持ちを明るくしていた。
そんなある日、乳をもらいに言った日に、珍しく梅が瑠璃に優しく話しかけてきた。
「瑠璃さん、あんたの乳が出ないのは、栄養が足りないからだろう。実は私が知ってる秘密の薬草があるんだよ。家のものだけの秘密だから、今まで言えなかったけど、この頃はあんたの子もたくさん乳を飲むようになって、わたしの子の分の乳も足りなくてね。そろそろあんたも自分の乳で子供を養えたらいい頃さ。」
「そうだったんですね。そんなことも知らずにすっかり甘えておりました。その薬草はどこにあるか教えていただけないでしょうか」瑠璃が訪ねた。
「特別に連れてってやるよ。だけど、絶対に人には言わないことだよ。弥彦さんにもだよ。何せ秘密の薬草だからね。」
瑠璃が承知すると、明日の朝早く、日の出前にかごを持っておいでと話がまとまり、まだ寝ている弥彦と赤ん坊をおいて、瑠璃はそっと家を出た。
梅さんの家につくと、外で待っていた梅さんが瑠璃の姿を見るなり、話もせずに足早に進んでいく。そのあとを駆けるように追いかけ、やがて村外れの崖の縁に出た。
そこは、深い沢の上の切り立った崖で、めったに人も訪れないところだった。その場所につくと、やっと梅が口を開いてこういった。
「この崖を少し降りた所に、薬草が生えているんたよ。ほら見てごらん、少しだけ葉っぱが見えるだろう。」
そういわれて恐る恐る覗いてみたが、それらしい葉っぱは見えなかった。
「あぁ、瑠璃さん、無理しちゃ危ないよ。ここに蔦を持って来たから、私が支えてるから、身軽なあんたが降りてって、あの薬草を二人分取ってきてくれないかね。私はこの通り太ってて、とても無理なんだよ」
この数日の雨で水かさが増した水音が谷底からゴーゴーと響いていた。冷たい風が吹き上げて、瑠璃も身震いするような、険しい崖だった。けれど、子供の乳の世話になった梅のためにも、子供のためにも薬草を取ってこようと、意を決して瑠璃は頷いた。
「いいわ。梅さん。私が降りて二人分の薬草をとってくるわね。どうぞしっかり蔦を支えていてね」
そういうと、瑠璃は草履を脱いで、梅の持つ蔦の端を腰に結んで、岩につかまりながら谷底に降りていった。
険しい崖をかなり降りてみたけれど、梅の言う薬草も見当たらず、瑠璃は梅に向かって声をあげた
「梅さん、薬草が見つからないわ。もう少し下の方かしら?」
すると、突然梅が笑い出してこう言った。
「嘘だよ。薬草なんて、真っ赤な嘘さ。あんたが邪魔だったんだよ。ここでおさらばさ!」
そう言うと、持っていた蔦を手離した。
瑠璃はたちまち崖を落ちたが、途中に生えていた小さな木にやっと片手で捕まった。
「梅さん!後生だから助けて!お願い、あなたに何かしたのなら償いをするから、どうぞ助けて!」瑠璃は崖の上の梅に叫んだ。
「あんたにわかるもんかね。あんたが来るようになってから、権蔵さんは私を蔑むような目で見るようになったのさ。それなのに、あんたが来る時間になるとそわそわして、身づくろいしだすんだ。口を開けばあんたの話ばかりさ。私が乳をやってる間あんたが権蔵さんに抱かれてる。毎日、私がどんな思いでいたかわかるかい。それなのに憎いあんたの子に、毎日毎日乳をやる私の苦しみがあんたにわかるかい。
あんたが来なけりゃ、私は幸せだったんだ!あんたなんか、死んじまえばいいんだー!!」
梅の叫びとともに、大きな岩が瑠璃の上に降ってきた。
その一つが瑠璃の頭にあたり、岩と一緒に、瑠璃は激しい谷の流れに落ちていった。
続く
🌸よろしかったら、物語の一話【瑠璃の物語】二話【瑠璃の冬の物語】は下のタグからご覧下さいね。