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山草の一覧

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権萃(ゴンズイ) ミツバウツギ科ゴンズイ属の落葉小高木。雑木林や低山の林縁など日当たりのよい場所に生える。小葉は2~5対ついた奇数羽状複葉で対生し、濃緑色で光沢がある。日なたの葉は反り返る傾向がある。花期は5~6月。黄緑色の小さな花を多数円錐状につける。花弁も萼も5枚で色も同じ。果実は袋果。1花から1~3個生じ、卵形で先がやや曲がって尖る。果皮は肉厚で中に種子は1~3個。9~11月に赤く熟す。熟すと裂開し縁に種子が残る。種子は薄く剥がれやすい仮種皮に包まれる。臭木(クサギ)と同じように果皮の赤色が背景となり、黒い種子を目立たせ、鳥類に食べられやすくアピールする二色効果があると考えられる。黒光りする種子はベリー果に見えるが、実際は硬く可食部分はなく、鳥が食べても消化されずに体の外に出され散布される。 ゴンズイの語源には諸説あり、定説はない。材がもろく、木全体に臭気があり、春先に枝を切ると樹液が溢れ出るなど有用性が低い。ヒレに毒針があり、雑魚や外道扱いされる魚類のゴンズイと同じように役に立たず、樹皮や太い枝に入る縦筋もゴンズイの模様に似ているので、そう名付けられたといわれる。他には、独特のにおいがあり、寺で用いる護摩木の材料になることから、香木の最高級品である『牛頭栴檀(ごずせんだん)』に例えて『牛頭の木(ごずのき)』と呼んだのではないかという説もある。さらに、平安時代の辞書が呉茱萸(ゴシュユ💬ミカン科の落葉小高木)に『こにすい』という振り仮名をつけていること、ゴシュユの木がゴンズイにやや似ていることから、『こにすい』がゴンズイに変化したという説もある。天人の臨終を五衰といい、その1つの臭気を連想するからという説も。 出典『葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑』『草木の種子と果実』『原寸で楽しむ身近な木の実・タネ』『樹木の名前』
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藪蔓小豆(ヤブツルアズキ) マメ科ササゲ属のつる性1年草。草地に生える。小豆(アズキ)の原種と考えられる。茎や葉に黄褐色の毛がある。葉は3小葉からなる。小葉は長さ3~10㎝、幅2~8㎝の狭卵形~卵形で浅く3裂するものもある。花期は8~10月。花は黄色で長さ1.5~1.8㎝。蝶形だが、竜骨弁(りゅうこつべん💬翼弁の下部前方にある花弁)は反時計方向に大きくねじれ、翼弁(よくべん💬マメ科の植物の花で左右にある一対の花弁のこと)も左右非相称。果実は豆果。長さ4~9㎝の棒状でぶら下がるようにつく。中に楕円形の種子が10個前後入る。種子は小豆より小さい。 小豆は本種を改良したものといわれ、古代から栽培される。小豆は日本を含む極東アジアが原産とされ、食習慣があるのは日本、韓国、中国、ブータンなどに限られる。日本では吉事や祭事に昔から用いた。現在は4~5万haの作付けがあり、ほとんどが赤色の子実で、種子の大きさにより普通小豆と大納言小豆に分けられる。白餡用の白小豆もある。他に、祭事の赤飯や小正月行事用の小豆粥などに用いる。味をつけない小豆粥は、解毒、利尿、排膿の薬効があるとされる。小豆の年間消費量は10万トンで、70%程度が国内で生産され、その7~8割を北海道が占める。中でも十勝地方産の小豆を原料とする餡は風味が良く、『十勝小豆』が普通小豆のブランドになっている。大納言小豆としては丹波大納言(兵庫県、京都府)、能登大納言(石川県)、アカネダイナゴン(北海道)がある。小豆の仲間では、大角豆(ササゲ)、緑豆(リョクトウ)、毛蔓小豆(ケツルアズキ)、竹小豆(タケアズキ)が食用とされる。 出典『野に咲く花』『里山の植物 ハンドブック』『食材図典』
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蘿藦(ガガイモ) キョウチクトウ科ガガイモ属のつる性多年草。日当たりの良いやや乾いた原野に生える。地下茎を長く伸ばして殖え、茎を切ると白い乳液が出る。葉は対生し、長さ5〜10㎝、幅3〜6㎝の長卵状心形で先は尖り、裏面は白緑色を帯びる。花期は7〜8月。葉腋から花序を出し、淡紫色の花をつける。花冠は直径約1㎝で5裂し、内側には長い毛が密生する。中心部にはずい柱があり、柱頭は長く花冠から突き出る。副花冠は環状でずい柱の基部を取り巻く。果実は袋果。長さ約10㎝、幅約2㎝の広披針形で、表面にはイボ状の突起がある。種子は扁平な楕円形で翼があり、基部には種髪(しゅはつ)と呼ばれる白い毛が多数つき、風でふわふわと飛ぶ。昔はこの毛を絹の代わりとして針山に用いたり、朱を染み込ませて印肉にしたり、鏡面を磨いたともいわれる。未熟果、若芽、若茎を天ぷらにして食べる。果実から出る乳液をイボ取りとしてイボに塗る。 ガガイモの『イモ』は地下にある長い根芋のことではなく、角形の果実を芋に見立てている。熟すと2つに裂け、裂けた果実は舟形である。舟形の果実の内側は白色で光っていて、まるで鏡のようである。それで『鏡芋』の名前がある。『カガミイモ』が『ガガイモ』に訛っていった。その後、漢名『蘿藦(らま)』の字を当てた。また、日本神話にはガガイモの殻の船に乗った少彦名命が海を渡ったと記されている。 出典『野に咲く花』『都会の草花図鑑』『薬草の呟き』『野草の名前 夏』
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仙人草(センニンソウ) キンポウゲ科センニンソウ属のつる性多年草または半低木。道端や林縁など、日当たりの良い所に生える。茎はよく分枝して広がり、葉柄でほかの木や草に曲がりくねって絡み付く。葉は対生し、3~7個の小葉からなる羽状複葉。小葉は厚くてやや光沢があり、長さ3~7㎝の卵形または卵円形で、先端は小さく突出する。ふつう鋸歯はないが、茎の下部の小葉は2~3の切れ込みがある場合もある。花期は8~9月。葉腋から円錐花序を出し、白い花を多数つける。花は直径2~3㎝で上向きに咲く。白い花弁のように見えるのは萼片で4個あり、十字形に開く。萼片は倒披針形で、縁に白い毛が多い。果実は痩果。長さ7~9㎜の扁平な広楕円形。長さ3㎝ほどのフサフサした羽毛状の花柱が残る。茎や葉に皮膚にかぶれを起こす有毒物質を含む。漢方では根を威霊仙(いれいせん)と呼び、利尿、鎮痛などに用いる。 花が終わると花柱が伸び、白くて長い毛が密生する。これを仙人のひげや白髪に例えたのが名前の由来。 観賞用に栽培されるテッセンやクレマチスも同じ仲間。センニンソウ属は本種のように花が上向きに咲くグループと、半鐘蔓(ハンショウヅル)のように下向きに咲くグループとに分けられる。見た目は同じ属のように思えないが、葉が対生し、痩果の花柱が羽毛状になる点でひとつの属としてまとめられている。 よく似た牡丹蔓(ボタンヅル)との違いは次の通り。 センニンソウ ・葉は羽状複葉で鋸歯はない ・萼が長く雄しべが短い ・花色は白色 ボタンヅル ・葉は3小葉で鋸歯がある ・萼と雄しべはほぼ同じ長さ ・花色はわずかにクリーム色 出典『野に咲く花』『四季の野の花図鑑』『草木の種子と果実』
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三葉(ミツバ) セリ科ミツバ属の多年草。山野の湿った林内や林縁などに生える。高さ30〜80㎝。茎は直立し、上部で枝を分ける。葉は3出複葉。小葉は卵形で先は尖り、縁には重鋸歯がある。花期は6~8月。枝先から複散形花序をまばらに出し、白色の小さな花をつける。花柄に長短があるので、花序はセリ科らしい傘形にはならない。果実は2個が接合した分果(分離果)。分果は細い円柱形で先端は尖り、縦の隆条が5個ある。 名前は小葉が3個あることによる。 軟白栽培したものが野菜としてスーパーの店頭に並び、吸い物や和え物などに使う香草としておなじみの野草。葉をちぎると独特の香りが漂う。栽培されたものより野生のもののほうがはるかに香りが強く美味。栽培は江戸時代からとされる。いくつかの品種・系統があるが、特性の差は小さい。 青ミツバは、半日陰で密植栽培して軟白状態にし地際で刈り取る。近年はハウス水耕栽培が多い。 根ミツバは、育てた根株を地上部が枯れた後、翌春に土寄せして軟白し、根付きのままで収穫したもの。 切りミツバは、冬季に地上部が枯れた根株を暗黒状態に遮光し、20〜30㎝ほど伸びた頃に日光をあてて葉を緑色にしたもの。 出典『野に咲く花』『草木の種子と果実』『夏の野草』『四季の野の花図鑑』『野菜・山菜ハンドブック』
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蒲(ガマ) ガマ科ガマ属の多年草。池沼や休耕田、水路沿いに生育し、しばしば水田にも入り込む。日本にはガマ属に蒲(ガマ)、小蒲(コガマ)、姫蒲(ヒメガマ)の3種類あり混生する。地下を横走する太い根茎により増殖する。 草丈は人の背丈以上になることもある。花期は初夏。雌雄同株で、茎の先に雄花穂(ゆうかすい)がつき、大量の黄色い花粉を出す。漢方ではこの花粉を蒲黄(ほおう)と呼び止血剤にする。『古事記』の『因幡の白兎』の中で、皮を剥がされた兎がガマの花粉で回復した話は有名。雄花穂の下のソーセージのような部分は雌花穂(しかすい)で、雌しべだけの小さな花がぎっしり詰まるように咲く。穂の表面の茶色い部分は全て種。綿毛は折り畳み傘のごとく内蔵されていて、冬に熟すと何かの拍子で一ヶ所崩れ始め、爆発したかのように勢いよく湧き出し、全体が綿あめ状の穂綿になる。この綿毛つきの種は雪のように風に舞いあちこちに飛ばされる。さらに一部は水辺を飛びまわる鳥の羽にまとわりつき、より遠くへと運ばれる。昔の人はこの綿毛を布団綿にした。 ガマ属3種類は雄花穂の位置、葉の幅で見分ける。果実期には雄花穂は枯れて見分けにくくなる。 蒲(ガマ) 雄花穂と雌花穂の間に隙間はない。雌花穂は10~20㎝と長く太い。葉の幅は1~2㎝。 小蒲(コガマ) 雄花穂と雌花穂の間に隙間はない。雌花穂は長さ7~10㎝で短い。ガマに似ているが小形。葉は3種類の中で最も細い。 姫蒲(ヒメガマ) 雄花穂と雌花穂の間に2~6㎝の隙間がある。雌花穂はやや細く長さは6~20㎝でガマとコガマの中間。葉の幅は3種類の中で中間。 出典『都会の木の実・草の実図鑑』『野草 見分けのポイント図鑑』
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男郎花(オトコエシ) スイカズラ科オミナエシ属の多年草。野山の草地や道端の半日陰に生える。地上に長い走出枝を伸ばし、先端にロゼット状の子苗を作って殖える。葉は対生し、多くは羽状に分裂し、裂片は卵状長楕円形で頂裂片が最も大きい。茎の下部には白い粗毛が多い。花期は8~10月。花茎は直立し、白い花を散房状に多数つける。花は直径4㎜ほどで、5枚の花弁がある。花が終わると長さ約3㎜の倒卵形の果実がなる。果実になると小苞がうちわのような翼になり風に乗って散らばる。 男郎花や、よく似た女郎花(オミナエシ)を生けた水は腐った醤油のようないやなにおいがする。このとこから中国では敗醤と呼ぶ。漢方では両種とも根を敗醤根と呼んで消炎や排膿などに用いる。 男尊女卑の時代では、男は白い飯、女は粟の入った黄色い飯を食べた。男郎花によく似た女郎花は黄色い花が咲くが、黄色い小さなつぼみを粟飯に見立て、女飯(オミナメシ)が転じてオミナエシになった。それに対して男郎花の白いつぼみを白米に見立てた男飯(オトコメシ)が名前の由来とする説もある。また、女郎花よりも草姿が大きくて茎に毛が多く剛直な感じで男性的なのが名前の由来とする説もある。 出典『里山の植物ハンドブック』『野に咲く花』『秋の野草』
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桔梗(キキョウ) キキョウ科キキョウ属の多年草。秋の七草。ほんの数十年前までは野山の日当たりのよい草地で普通に見られたが、最近は数が減り絶滅危惧種に指定されている。飼料や屋根の材料を確保するために維持されてきた茅場と呼ばれる草地がなくなったのが原因といわれる。園芸品種は庭や花壇で栽培されて普通に見られ、桃色花や白色花、二重咲き、袋咲きなど豊富にある。花期は6~10月、茎の先に数個の花をつけ、花冠は径4~5㎝の鐘形。雄性先熟で、花が開くとまず雄しべが花粉を出し(雄性期)、その後花粉がなくなると雌しべの柱頭が5つに割れ(雌性期)、自家受粉を避ける。五角形の整った花の形は家紋にも使われている。乾燥した根は漢方薬として咳止めに使われる。 名前は、中国名の『桔梗』の音読みが変化したもの。別名は『蟻の火吹き』。アリが花弁を噛むと口から蟻酸が出て青紫色が赤紫色に変わる。アリの口は赤くなり火を噴いたように見える。また、花の中心にある花柱を火吹き竹(火を起こす時に用いる竹筒)に見立て、小さいので『蟻』がつき蟻の火吹きとなったという説もある。開花直前のつぼみが丸くふくらむ様子から英名を『balloon flower』という。 出典『里山の植物ハンドブック』『四季の野の花図鑑』『都会の草花図鑑』『野草の名前 夏』
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波布草(ハブソウ) マメ科センナ属の一年草。熱帯アメリカ原産。江戸時代に薬草として渡来した。小笠原、南西諸島の畑地、樹園地、牧草地、荒れ地などに生育する帰化植物。有毒植物で牧草地の強害草。根茎と種子により繁殖する。茎は直立、分枝があり高さ50〜150㎝。葉は互生、偶数羽状複葉を形成し、小葉は3〜5対、披針形、卵状楕円形、卵形で長さ3〜5㎝、先が尖る。花期は7~10月。花は葉腋から伸びた短い花柄に数個着ける。萼は5個からなり長さ9㎜。果実は豆果。円柱形で長さ10〜12㎝、20〜30個の種子を含む。種子は卵形で扁平、長さ6㎜、なめらかで緑色を示す。種子または全草を生薬にしたものが望江南(ぼうこうなん)である。 本種の種子を煎じてハブ茶とした。類似植物の恵比寿草(エビスグサ)の種子(決明子)からもハブ茶ができる。エビスグサのハブ茶と本種のハブ茶と紛らわしいが、一般にハブ茶といえばエビスグサを原料としている。 和名は沖縄の毒蛇ハブからきたものではなく、マムシをハミ、ハビとも呼ぶので、ハビソウが変化したものという。民間ではマムシにかまれたときに葉をもんでその汁を傷口に擦り込むほか、神経痛のときに煎じて飲む。 出典『日本帰化植物写真図鑑』『薬草の呟き』『日本大百科全書』
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