《 あてなるもの 》

藤の花といえば、まず思い起こすのは、気品のある紫色の花が藤棚から垂さがって耀いている姿でしょう

ここ赤塚植物園でも本園に紫色の、万葉薬用園に白色の藤の花を観ることができます

艶やかな牡丹を堪能したあとで藤の花に接すると、心に静けさが蘇ってきます

古い時代から日本人に愛されてきた藤の花

清少納言は枕草子第四二段で
あてなるもの、薄色に白襲(しらがさね)の汗袗(かざみ)。かりのこ。削り氷(ひ)にあまづら入れて新し金鋺(かなまり)に入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。いみじううつくしき児(ちご)の、いちごなど食ひたる。
❖あてなり、とは高貴なとの意

また、第四四段の木の花で
木の花は梅の濃くも紅梅。桜の花びらおほきに、葉色濃きが、枝ほそくて咲きたる。藤の花、しない長く色よく咲きたる、いとめでたし。
(あとは略)
❖しない長く　　しないとは花房のこと

拾遺集・源重之の歌に
《夏にこそ 咲きかかりけれ 藤の花
松にとのみぞ 思ひけるかな》
近世以前、藤棚のない時代には、松の木に絡ませて藤の木を生育させていました

松は男性を、藤は女性をイメージさせます