いつもと同じ会社からの帰り道
同じ道のり
いつもと違うのは時刻が子の刻、午前零時を過ぎていた

明日までに仕上げなければならない仕事で残業になった

職場から歩いて帰れる距離に住んでいる僕は、自然と居残り組の最後のひとりになる
通用口の警備員に終了の挨拶をして表に出ると真上に月がのぼっていた

晩秋だというのに風が生温かく感じられた
月明かりのせいか街がいつもと違って見える

さっき職場で食べたコンビニ弁当の揚げ物が悪かったのか、なんだか気分がすぐれない

等間隔に外灯が並ぶ薄明るい路地を歩く

あんな場所にポストなんかあっただろうか‥

突き当たり正面にみえてきた赤いポストをぼんやり見つめながら歩き進む

近くなるほどポストが遠のいていくような錯覚に陥ったが、ポストの受け口に詰まっている物体だけは、おぼろげに見えてきた

なんだろう‥
あれは‥

ぼんやりした白いもの
白い集合体が動いているようにもみえる
目を凝らす

手のひらが生汗で湿り、先を見つめる眼球が乾いてきた
瞬きをしたいと感じたが、できずにいた

なにかの呻き声のようなものが聞こえ我に返る
咄嗟に、見てはいけない
と僕の脳が判断したのか、そこからゆっくりと視線を横に逸らすことができた

その場所をやり過ごして自宅に帰り着き、寝間着に着替えてホッとひと息ついた
明日も早い
シャワーは翌朝にして、今夜はもう寝ようと思う

今日は疲れた‥

ポストの受け口で白くうごめいていたもの
僕の本能が避けたもの
まるで大きな蛆が湧き出ていたかのような‥

明日　また、あの場所を通る
朝の光の中で確かめればいい‥
あの赤いポストがまだ存在していたならの話だが‥

〜赤いポスト〜

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