【ピンクッション物語】第五話

退院する前日に親父と話し合って、このまま、学校に残ること、武道を始めることを決めたんだ。

親父も、きっとそう言うだろうって、あちこち道場を回って案内を貰ってきてくれてて。親父と話し合って、俺は合気道を始める事にしたんだ。

学校に戻ってからも、友達がいない日は続いたけど、もうそんなことは気にならなくなってた。俺は毎日道場に通って、怪我が治るまでは見学して、治ってからは本格的に稽古を始めたんだ。
そこで、新しい友達もできた。
クラスの奴らも、俺が武道を始めたことを知ってちょっかいを出さなくなったし。。
親父とも毎日、いろんなことを話すようになったんだ。
少しずつ、俺の毎日が変わっていった。

今も、怪我したことが良かったなんて思えないけど、自分が変わりたい！って真剣に考えるきっかけだったし、自分で行動を起こすきっかけになったから、それはそれでターニングポイントだったと思うんだ。
俺の話はそんなとこだ。

君の場合は、君の事情があるとは思うけど、今、俺は少しだけ君の力になれるかもしれないって思うんだ。そんな卑劣な奴らを許せないから、君がその気があれば、お昼の放送で呼びかけるとか、手伝おうかなって思うんだ。

卓は、一気にそう言うと女の子の答えを待った。


女の子は、大きなため息を一つつくと、ゆっくり口を開いた。

大変な経験をしたのね。
お昼の放送で呼びかけるのも一つかも知れないけど、そんな単純じゃないと思うから、それは遠慮しとく。
でも、気持ちだけ、すごく嬉しかった。本当に有難う。

そして、もう一つは、私も負けないものを見つけようと思う。卓くんが武道を始めたように、自分に自信をつけるようなもの。

今ね、話を聞いてて思ったんだ。自分は人より劣ってるって、どこかで苛められるのも仕方ないって受け入れてたかなって。そして、自分が自分を裏切って卑屈になったてら悔しいなって。そうだなぁ、私は武道はできないけど、一輪でも存在が際立つ高潔な花みたいな女性になりたいな。できるかなんて考えないで、私もどんな自分になりたいか考えて、一歩進もうと思う。
ほんとに有難う。

そう言って女の子は頭を下げた。


そっか！
君がそう決めたならな応援するよ！
何かあったら遠慮なく言ってね。

あっ、俺、二年一組、卓(すぐる)
君は？

私は、二年三組、美幸(みゆき)


2人がそんな話をしているところに、先生が通りかかった。


おい！卓、
こんなところでナンパか？

馬鹿言わないでください！
この子の運動靴がなくなって困ってたようなんで、俺が話を聞いてたんです。
先生、ちょうど良かった、後は頼んます！

そう言って、美幸の肩に手を置くと
『じゃ、頑張れよ！』と小さく呟くと昇降口から出ていった。


全く、困ったもんだ。
じゃあ、ちょっと職員室に来るか？

卓を見送ると、先生はそう言って職員室に向かっていった。

卓の後ろ姿を見送って、美幸も先生の後から職員室に入っていった。

さっきは涙を浮かべていた美幸だったが、今はまっすぐ前をみて顔を上げて歩いていた。


(続く)


🌺今日の花 スプレーマム
花言葉 高潔

第五話のピンのテーマは、高潔
な心です😊❣️