【ピンクッション物語】 第三話
～スプレーマム～

俺、小学校の時、親父の仕事の都合で何度も転校繰り返してて、転校するたびに理由もわからず苛められる事が続いていた。
靴とかノートとか隠されたり、遊びの仲間はずれにされたり、帰り道通せんぼされたり、皆から暴力もされた。

俺んちは、離婚して親父と2人暮らしだったから、仕事で帰りも遅くて、忙しい親父に言えないでいたんだ。
だけど、4年生になったある日、学校の遊具で怪我をして、それで親父にも苛められてることがわかってさ。

俺の小学校に、でっかい鉄の輪っかみたいなのに皆でつかまって、ぐるぐる回る遊具があったんだ。人気の遊びだったいつも仲間に入れて貰えなくてさ、やりたいなぁって思ってたんだ。そしたら、ある日珍しく皆が遊びに誘ってくれて、嬉しくてみんなと同じようにぐんぐん回してたんだ。

そしたら、かなりスピードがついたところで皆が一斉に飛び降りちゃったんだ。
俺はそのまま、高く振り上げられて、空中に放り出された。


えっ、大丈夫だったの？


俺、意識を失って救急車で運ばれて、腕と腰の骨の骨折で、幸い命は助かったけど、手術して長い間入院したよ。
そう言って卓がシャツをたくしあげた腕には、大きな傷あとがあった。

親父が学校に抗議したけど、子供たちにも悪意はなかったからって、終わりになっちゃってね。保護者からは謝罪もなかったらしい。

もともと無口だった親父は。笑わなくなって、親父もとてもショックだったんだろうね。俺のベットの脇でいつも難しい顔をして黙り込んで何か考えていたんだ。

あと、一週間で退院予定ですって、主治医が言ったとき、親父が俺に聞いたんだ。

卓、父さんが転勤が多くてお前に辛い思いをさせてすまない。それに、お前が苛められてることにも気づけなくて、俺は父親として情けない。本当にすまない。

お前が怪我をしたと連絡があった時に、お前が死んだら生きていけないと思った。お前がどんなに大切な存在か改めて身に染みたよ。

それでずっと考えていた。
これからは、もっとお前のことを理解するよう努力しようと思う。仕事より何より、一番優先はお前にする。

それで、難しい質問だと思うけど、お前はこれからどう生きていきたいか聞かせてほしい。


親父は、一言一言噛み締めるように俺に聞いたんだ。

そしてこうも言った。
私はお前が入院してから、ずっと考えてきた。
お前の怪我はとても辛い。けど、それがなかったら、お前の気持ちなど考えることもなく、毎日仕事に明け暮れていたと思う。それを、お前がこんなに辛い痛みで教えてくれた。
お前が抱えていたいろんな問題を知って、父さんも心が張り裂けそうだ。これは俺の問題でもある。しっかりお前と話し合って、これからの生き方を考えていきたいと思うんだ。


(続く)

🌺今日の花 スプレーマム
花言葉 高潔

第三話のピンのテーマは、高潔
な心です😊❣️