海辺で咲く
ハマボッス(浜払子)


お久しぶりの海釣りへ🎣

夫は晩ごはん用の豆アジを狙ってサビキ釣り。
私は釣れたらラッキーのガシラを狙って落とし込み釣り。
豆アジは順調に釣れてゆくけど、私はエサ取りのベラとフグばかり釣っては、海に返すを繰り返していた。

途中、一羽のアオサギが数メートル近くまで来てじーっとこちらを見てる。
夫が釣れた豆アジを放ってやると、いそいそと啄んだ。
そしてアオサギは、また、じーっとこちらを見る。
もう一度、釣れた豆アジを放る。
啄む、放る、啄むを4、5回繰り返した時、
掌ほどあるベラが釣れた。
大きすぎて食べないかな？と思いつつ放ってみると、アオサギはいそいそと啄んで、器用に加え直しながら頭からするりと飲み込んだ。
細長い喉の、ベラの通っているだろう部分が膨らんで、途中、ピクリとしてから腹に収まっていった。
その後も、まだアオサギはそのまま居続け、こちらをじーっと見てる。
竿をあげる度に、それを目で追うように、微かに顔を動かす。

期待されている…

そんなプレッシャーの中、二人して、フグ、キタマクラの毒を持つ魚を立て続けに釣り上げる。
アオサギに向かって
「これは食べたらアカンやつやねん」
と、なぜか言い訳のような台詞を叫びつつ、目を合わせないように毒魚を海に投げる。
見なくてもわかる。
アオサギは、きっと切ない目をしてるに違いない。

地合いが過ぎたのか、アタリがなくなってきた。
アオサギが来るまでは、入れ食いだった豆アジも、ベラも、アタリさえない。
夫は、竿を仕舞って帰り支度を始めた。
アオサギは変わらず、こちらをじーっと見てる。

よく分からない緊張感が漂う。
よく分からない焦りが募る。
あと、一匹だけ。
一匹釣ったらお仕舞いにしよう。
その時、コツコツとアタリが来た！
神経を右手に集中させてアワセる。
よし！かかった！
この感触はフグではない！
緊張から解放された安堵が胸に広がり、リールを巻く。
が。
海面から顔を出したのはガシラ。
あー、これはあげられない…
アオサギと目を合わすことなく、
釣れたらラッキーのはずだったガシラをクーラーボックスに仕舞った。