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醜男
茄子(ナス) ナス科ナス属の一年草。インド東部から東南部原産と推定され、中国や中近東からアフリカには5世紀以前に伝播した。以来中国では主要野菜となり、各種の品種が分化発達した。日本では8世紀から記録があり、現在は全国的に長卵または中長形が栽培されるが、元来品種の地域差が明瞭な野菜で、地方色は現代の品種にもなお一部に生きている。へたに刺があり、果皮がいたみやすく病害虫が多いなど、生産上は扱いにくい面があり、栄養価も乏しいとされてきたが、淡白な味で和洋中華や漬物などに幅広く利用され、一定の需要を保っている。 草丈は早生品種で50~60㎝、晩生品種では1m以上になりさかんに分枝する。茎、葉柄、葉脈、萼にとげがあるものもある。茎や葉には灰色の腺毛や鱗片状の星状毛がある。葉は楕円形で、長さ15~40㎝、長い葉柄があって互生し、一般に濃紫色を帯びる。花期は6~10月。花は茎に側生し、普通は一花が下向きに開くが、品種によって三~五花を房状につけるものがある。その場合でも結実するのは最初の一花だけであるが、まれに一房に数花をつける品種もある。花冠は直径3㎝ほど、浅い杯状で数片に分裂し、紫色。 果皮の黒色はナスニンによる。アントシアニン色素で変色しやすいが、アルミニウムや鉄のイオンと結合すると藍色になって安定する。古くからナスの漬物に古釘やミョウバンを入れるのはこのためである。低温下では果皮が萎び、種子が褐色になるので、10℃前後で保存する。栄養成分は少ないが、繊維は比較的多い。果皮のナスニンや褐変物質のクロロゲン酸は抗酸化作用の優れたポリフェノール類で、老化抑制やガンの予防のほか、前者は動脈硬化の予防や眼精疲労の回復、後者は血圧や血糖値の正常化に有効とされる。 現在の日本のナスは、諸外国の黒紫色の品種と比べてもとくに濃い漆黒でつやがある。これは紫外線の弱いハウス栽培でも色ぼけしないように、改良が重ねられた結果である。ナスの色はアントシアニン系の黒や紫のほか、葉緑素により全体が緑の縞になるものと、色素のない白色がある。アジア諸国ではいずれもふつう食用とされ、卵形の白ナスはまさにeggplantである。果皮の色は味や品質には直接にはかかわらないが、黒紫色の品種以外はあまり改良が進んでいない。日本でも江戸時代からこの3種類が存在したが、現在は青ナス(緑色のナス)がわずかに栽培される程度で、果皮や果肉がややかたい白ナスはおもに観賞用とされる。呼称としては黒紫以外の緑や白色のものを白ナスと呼ぶこともある。なお青果として用いるナスは未熟果で、熟すると数倍大きな黄色の果実となり、食用には適さなくなる。 ナスは漢字では『茄』が当てられ、『茄子』と書かれることもある。『茄』は植物をさし、『茄子』はその果実のことであるという。日本への伝来時には『奈須美』となっており、ここから『ナスビ』と呼ばれ、転じて『ナス』になったとされる。また、ナスは『為す』『成す』の意味で、果実がよく成ることに由来するという。『和名類聚抄』では、『茄子は、中酸美(なすび)の義なり、その実少しく酸味あればなり』という説を紹介している。『初夢や 一富士二鷹三茄子』と珍重されるのは、ナスに成すをかけて新年のめでたさを祝ったものであろうが、一説には江戸時代早くも東海地方の暖冬地でナスの促成栽培が始められ、夏の野菜が初春に珍しいということで得難い貴重なものとして比喩に用いられたともいわれる。『秋茄子は嫁に食わすな』の諺は、『夫木和歌抄』の『秋なすび醅(わささ→新酒)の粕につきまぜてよめにはくれじ棚に置くとも』から出たもので、秋ナスは味がよいので嫁には食べされるなという意味である。このほかに、秋ナスは体を冷やす食べ物で、また皮もかたく消化に悪いので、嫁の体を気遣ってのこととする説もある。『親の意見とナスビの花は千にひとつの無駄もない』のたとえは、ナスの花はウリ類などと違って雄花と雌花が分かれていないので結実率が高いことと、枝か茂って次々と開花結実し、落花が目立ちにくいことからいわれたものである。 出典『食材図典』『日本大百科全書』『野菜園芸大百科 ナス』
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