ミチコは帰宅部だった もともと頭が良いので塾へも行かず、毎日まっすぐ家に帰ってくる 継母はミチコと一緒に遅めのお茶をとる 今日はチェリーケーキを焼いてみた ミチコがフルーツ入りのお菓子を喜ぶからだ ミチコはチェリーケーキをもう七切れも食べている 継母は聞いてみる 「お友達はできた？」 ミチコは八切れめに手をのばしながら「うん」と答える 「今度うちに連れていらっしゃいよ」 「うん」 ということで次の日、ミチコがクラスメイトを連れて帰ってきた 暗い感じの女の子で美人だった 「こんにちは…黒井ミサです…」 と挨拶された (ｴｺｴｺｱｻﾞﾗｸ…) 継母はミチコの友達選びのセンスに脱帽した (さすがヨシヒコさんの娘だわ…) それからふたりは口の周りがチョコ色になるまで継母手作りのチョコレートケーキをむさぼり食った 継母は「食べ終わったら、ちゃんと顔と手と制服を洗うのよ」と微笑んだ 〜ミチコと継母３話〜 ムスカリ・アルメリアカムのお花

「ミチコちゃん…小指が立っているわよ」 と継母は言った ミチコは目玉焼きの穴から目をぱちくりさせて、「癖なの…」と言う まあ女の子だから、そんなものなのだろうと継母は思った ミチコは穴のあいた目玉焼きを目つきの悪い犬のジョンにくれてやると「行ってきます」と玄関にむかった 「いってらっしゃい。車とおじさんには気をつけるのよ」 継母は見送る ミチコはふと自分が中学の時の制服を着ていることに気づいた 踵を返してトントントンと二階の自分の部屋に戻っていく 継母は「ミチコちゃん!! いきなり登校拒否⁉️」と慌てた 高校の制服に着替えなおしたミチコは爽やかに「行ってきます」と玄関を出ていった 継母はホッとして(こんなことじゃダメね‥明日からは黄身だけの目玉焼きにしなくちゃ)と反省していた つづく… 〜ミチコと継母２話〜 階段踊場の植物

「おいしそう‥いただきます」 ミチコは目玉焼きの黄身だけをクルリと食べると「ごちそうさまでした」と箸を置いた 継母は、慌てて白身の火の通り具合がまずかったのかと聞いた ミチコは、自分は白身は食べないのだと答えた 継母は(まだまだ知らない事が多すぎる‥)と内心ため息をつき、うなだれた (ヨシヒコさん…) 継母は自分に前妻との子ミチコを残して早々に死んでしまった夫の事を思った 今日からミチコは高校一年生、難しいお年頃だ どうやって接していけばいいのだろう 不安な気持ちをヨシヒコにぶつけたかった ふと顔をあげるとミチコが、穴の空いた目玉焼きを両手で持ちあげ 、穴のあいだから　こちらを覗いているのだった つづく… 〜ミチコと継母１話〜 カメリア・ククフォンゲンシスのお花