昔から遊園地に行くと、必ず鏡張りの迷路に入った ミラーハウスと呼ばれるそれは正面が一面ガラス張りで、中からも外からも様子が丸見えだ そういうタイプの迷路なので、外で待っている両親の姿も中から見えていて、子供ひとりでも入れる安心設計だった それでも少し怖いのだが日常を超越したパラレルワールドの魅力には勝てない 薄いグリーンがかったガラスと鏡のダンジョンの世界に入り込むと私は必ず不安になった 焦るせいか、単純な作りの迷路なのに迷った 怖くなった私は外で待っている両親に口パクで「コワイ」と合図するが二人とも無表情だ こちらを向いて目まで合っているのに、私の不安げな表情は届かない 諦めて気持ちを押し殺し歩きだす やっとミラーハウスを脱出すると、いつまで遊んでんのと言われた 私が「怖くて呼んでるのに無視してた」と怒ると、「なに言ってんの笑いながら行ったり来たりしてたくせに」と母は言った 言っておくが私は笑いながら走ってなんかいない 最初から最後まで不安気に歩いていたはずだ 「お昼にいくよ」と歩き出す両親のあとを着いていく 両親が見ていた私は一体誰だったんだろう‥ 背後でミラーハウスが大きく歪んで笑ったような気がした 〜鏡の中にいるアルブカ〜 ダークハロウィン🏷️に参加します 殆どノンフィクション