恒川光太郎の短編集『龍が最後に帰る場所』に収録されている【夜行の冬】 シャラン‥ 冬の真夜中　外から鈴の音が聞こえる 夜行様の錫杖の音だ 寒い夜中に家を抜け出し 夜行様についていく人々が列をなす 一晩中、列から脱線することなく朝まで無事に歩き続けることができれば終了 朝がきて見慣れた町の景色が現れ、一人また一人と列を外れ、其々の日常に戻っていく だが、戻る先の日常の世界はパラレルワールド 昨日まで独身だった自分が、いつのまにか誰かと結婚して子供までいたりする世界 違う職業に就いている自分がいたりする世界 そしてまた今夜も錫杖の音が響く 気に入らなければ、また真夜中に夜行様の列に加わればよい 新しい世界の違う自分を期待して‥ 夜行の列に毎回参加する女性の話が悲しい 女性にはシゲトシという旦那とユウヤという子供がいた しかし、この列に加わってしまった 「とても幸せだったのに、生活に膿んでいたのかもね」 たどり着くパラレルの世界には、もう同じ旦那も子供もいない 幾晩、歩き続けても出会えないのだ 女性が言う 「ああ‥シゲトシとユウヤは奇跡だったんだなって、ようやく気づいたってわけ」 この物語、結末は後味悪く悲しい シャラン‥ 〜今日のお花・彼岸花〜 毎月23日は本と植物と。🏷️に参加します

小説のお話 恒川光太郎の『夜市』は有名だけれど、一緒に収録されている『風の古道』の方が好きかなと思う。 どちらも異世界の物語だけれど、こちらのほうが哀しさ懐かしさを感じられた。 そして読み終えたあとの余韻も好みだ。 電子ブックだが、この物語の終わる部分にマーカーを引いている。 “これは成長の物語ではない。 何も終わりはしないし、変化も、克服もしない。” ほんとやなあ‥ 〜風の小道〜 ペンディングトレイン終わっちゃったね（ ; ; ）