ガーゴイルが泣いている 鳴いているのではなく泣いている この家の住人が変わった いつも自分の側で遊んでいたこの家の女の子が両親と共に引っ越していった 嬉しそうに自分の顔を叩いてくれた女の子はもういない 笑いながらお腹を撫でてくれた女の子はいなくなった 女の子の笑い声のかわりに聞こえるのは落ち着いた若夫婦の談笑だけになった 懐かしくて泣きたくなった 夜になると窓明かりに照らされて　いつまでも泣いた ガーゴイルの涙は頬をつたい肩におち手の甲を流れて地面に染みこんだ 春にはそこから何かしらの草花が芽吹くだろう 灯り窓から仲の良い若夫婦の笑い声が聞こえる そして 神様は知っていた 数年後　また小さな可愛らしい手がガーゴイルに触れる日が訪れることを知っていた 〜思い出週間〜 ガーゴイルの思い出