雪のない国にうまれたガラパゴス大トカゲは、はじめて降りしきる雪を見た ああ　これが‥雪というものか‥ と、ゆっくり空を見上げた 遠い昔に母親だろうと思われる大トカゲが言っていた ここより　もっと北のほうでは雪という白いものが空から降ってくるんだと‥ ゆっくりでも早くでもなく降りてくる雪を見上げながら、母親であろうと思われる大トカゲの事が思い出された いなくなったのは　いつの頃だっただろう 思い出せなくなっていた 雪は木々に積もり自分の足もとにも積もり、身体や鼻先にも積もっていく 冷たいんだなぁ　雪って‥ 雪のない暖かい国の感覚が蘇ってきて、あの頃は全部が眩しかったなぁと思う いつもまわりに太陽があった 懐かしい気持ちにはなったが、あの頃に戻りたいとはおもわなかった ガラパゴス大トカゲは、鼻先から尻尾まで積もった雪を、ゆっくり払い落として のそりのそりと独りぼっちの我が家へ戻っていった