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谷地鳥兜(ヤチトリカブト) キンポウゲ科トリカブト属の多年草。亜高山帯〜高山帯の湿った草地に生える。茎の先は長く伸びて70〜150㎝。標高の低い所では花序はよく分枝して円錐状、高山の風衝地では散房状になる。花期は8~9月。雄しべはふつう無毛。本種は細葉鳥兜(ホソバトリカブト)の変種。広義のホソバトリカブトは花柄と萼の毛が開出することが特徴。東北地方南部から中部地方にかけて3つの地方的変種、中部地方の高山に高山変種が1つ認められる。トリカブトの仲間は雑種を作りやすく、正確な同定は困難。 伶人(れいじん💬雅楽を演奏する人)は錦製の鳳凰をかたどった冠をつける。これを鳥兜という。花の形がこの鳥兜に似るのでトリカブトの名前がついた。ヤチトリカブトとは谷地(湿地)に生えるという意味で、基準標本が上高地の谷間で得られたため。しかし、本種は北アルプス高山帯に広くふつうに分布する。高山植物が低所の渓谷沿いに生育することはしばしば見られる現象であり、ヤチトリカブトが湿地に好んで生えるというわけではない。 トリカブトは毒草の代表で、古くから矢毒に利用された。全草、特に根に猛毒のアルカロイドを含むが、含まない種類もある。漢方では紡錘状に膨らんだ母根を烏頭(うず)、その周りにつく子根を附子(ふし)と呼び、様々な方法で減毒して、多くの処方に用いる。日本にはトリカブトの仲間が40種類以上あり、区別は難しい。花はひと目でトリカブトの仲間と分かるほど独特の形をしているが、若葉は二輪草(ニリンソウ)などの山菜と間違えやすい。死亡した例もあるので注意が必要。ニリンソウの地下の根には膨らんだ塊根はないので、葉が似ていても、地下に膨らんだ塊根があれば毒草と思って採取しないこと。 出典『高山に咲く花』『西穂高の花100選』『薬草の呟き』『野草の名前 秋冬』
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