《 合歓の木 》童話 寒い北の海では 明るいお月さまが耀き そよ風が吹いていました 風が海のおもてを通りすぎると 海はたくさんの小さなしずくを お月さまにむかって 舞い上げました 風船のように 夜の大空に漂う海のしずくに お月さまはたいそう歓び 明るい珊瑚のような耀きを与えました 耀きが増すと しずくは可愛らしい妖精になり あたたかな南の空に向かって 飛んでゆきました 長いながい旅で 飛びつかれた妖精たちは ゆっくりと休めるお庭がないかとさがしていると 枝と葉だけが残っている 一本の木を見つけました この木は 妖精たちが訪れるまでは みすぼらしい花しかつけていなかったので 誰も目を止めることがありませんでした 疲れを癒すために 妖精たちが花のない枝で休んでいると お月さまは 枝と葉だけの木を憐れに思い 妖精たちが ずっと枝にとまって 毎年 花となって やわらかなピンクの色を耀かせるようにしました こうして ピンクのねむの木は そのお庭を耀かせ お家の人や お庭の前を通り過ぎる人たちに 幸せを与えてくれるようになりました 完 (以前、別のサイトに、白いねむの木を撮ったときに作り載せたものを、一部手直しました)