百日紅（さるすべり）　仲夏（ちゅうか）・・夏のなかば 梅雨明けごろから九月末まで咲き続ける木の花。 長く咲くので「百日紅」 いつの世も祷りは切や百日紅 中村汀女さん きらきらと照るや野寺の百日紅 正岡子規さん けんらんたる女を消せば百日紅 加藤秋邨さん 久方の空気の破片さるすべり 流ひさしさん

紫陽花　アジサイ ・・夏の季語 紫陽花は、小さな花が群れ咲いて大きな毬（まり）の形をなす、梅雨の時期を代表する花。 紫陽花に秋冷いたる信濃かな 杉田久女さん ・・故・山本健吉さんが『現代俳句』の中で絶賛しております。 「秋冷いたる」の音調は爽やかで快く、「信濃かな」の座五も磐石のように動かない。なぜ動かないか、理屈を言っても始まらぬ。とにかく微塵揺るぎもしないこの確かさは賛嘆に価する。 ・・との事でした。 う〜ん　俳句は良く分からん！ 5月7日　今日は健吉忌 評論家・山本健吉の1988(昭和63)年の忌日・・合掌 紫陽花の　大きな毬（まり）の　皆褪せし 松本たかしさん 紫陽花の　蔭に目があり　見ればなし 加藤楸邨(かとう しゅうそん)さん 紫陽花の奥の怒濤よ土葬村 流ひさしさん

葉脈　ヨウミャク ９月の季語 葉脈に余白の温み青芒（アオススキ） 高遠朱音さん 葉脈の陽の突き通る春紅葉 たけしさん 葉脈の朽ち残りたる古巣かな このはる 紗耶さん 葉脈を聴いては浮遊する影よ 流ひさしさん

季語・・向日葵（ひまわり、ひまはり） 晩夏 向日葵が　すきで狂ひて　死にし画家 高浜虚子さん オランダの画家であるフィンセント・ファン・ゴッホ(1853年～1890年)は「ひまわり」と称される数点の絵画を残していて、この花に対して強い愛着を持っていたといわれています。 日まはりの　花心がちに　大いなり 正岡子規さん 雲焼けて　向日葵のみを　昏くせる 山口誓子さん がつくりと　祈る向日葵　星曇る 西東三鬼さん きのふわが　夢のかけらの　小向日葵 加藤楸邨さん 向日葵折れたり神殿を速読し 流ひさしさん

たんぽぽの　斜面に針を　溺愛す 流ひさしさん ・・作者のいくつの時作品がわかりませんが、たんぽぽの生命力に感嘆しているように感じました。 たんぽぽの俳句の名句の中から たんぽぽのぽぽと綿毛のたちにけり 加藤楸邨さん 加藤楸邨さんは、本名を健雄（たけお）といい、明治38年(1905)の生まれの昭和から平成初めまで活躍した俳人です。若くして父を亡くし、働きながら苦労して学びました。 句を作りはじめたころは水原秋桜子に師事。秋桜子の主宰する俳句雑誌である「馬酔木」の発行所に勤め、秋桜子の勧めもあり、東京帝国大学で国文を学びます。   句作に自己の内面の悩みや人間というものの追求を重ねるようになり、秋桜子に難解と言われたこともあります。 作風の幅は広く、俳句の可能性を求め続けた俳人でもありました。   後進の育成にも熱心で、伝統的な俳句を詠む人、社会性俳句を志す人、前衛的な俳句に進んだ人、多様な俳人を育てました。楸邨には多様な俳人たちが連なることから、「楸邨山脈」といったりもします。   平成5年(1993年)享年88歳で永眠しました。 ・・ちなみに流ひさしさんは加藤さんの大ファンでした。