上溝桜。五月頃、染井吉野や山桜がもの悲しく散ったあと、ウワミズザクラがブラシのような花をひょうきんに咲かせる。桜を見飽きた目にはこの穂状の花が新鮮で、とても気に入って癒される。
そのあと、完全に忘れているが、８月中旬になって緑の実が黄色、橙色、赤、黒とおいしそうに変わり、熟すのを待っていた。

不老不死の妙薬とされているので、一粒味見した。黒みを増した小さな実は種ばかりでも酸っぱくおいしい。青い実を塩漬けにしたものは杏仁香（アンニンゴ）と呼ばれ、また熟れた実は果実酒にもなり、新潟県では売られているようだ。

ヒヨドリやツキノワグマが好物な木の実だけに、熊と競り合うことになっては、不老不死とはいかず、あっさり不老即死である。