“もう一度”

お盆が終わりました。
返り咲きのデイジーを見ながら、今は亡き父の事を思い出しています。

父にはとても可愛い友達がいました。
近所に住む６歳の男の子、ヒロ君。
私にも弟にも子供がないので、父にはさながら孫のような存在だったようで、ヒロ君が遊びに来ると一緒にオヤツを食べて将棋をするのが常でした。父の病気が進行するにつれて、ヒロ君のお母さんは気を遣って「おじさんは今大変だから、もう遊びに行っちゃダメよ」と諭します。ヒロ君は父とまた将棋をする日を楽しみにしつつ、やりたくもないサッカークラブと、弾きたくもないピアノの練習に戻って行きました。
亡くなった日、ヒロ君のお母さんが学校から帰ってきたヒロ君に「落ち着いて聞いてね」と言った途端、何も聞かないうちにヒロ君は床に崩れ落ちて泣きました。「お母さんのせいだ、おじさんに会いに行っちゃダメっていうから」

父がいなくなったことで誰よりも悲しかったのは、実はヒロ君ではなかったかと思います。
６歳にして大親友を失い、幼い心を痛めたのですから。

誰にでも「もう一度会いたい」相手がいますね。
人間かもしれないし、ペットかもしれない。

お盆は、今は亡き愛する存在に思いを馳せる時。
私にはなぜか、きっとまたヒロ君と父が会える日が来るような気がしてなりません。