檜。この時期、球果が付いている。
ヒノキは建材として最も優れ、耐久性、保存性があり、法隆寺をはじめ神社仏閣に用いられている。伐採されて約200年間は強度が増し、1000年以上経っても伐採時と強度が変わらないという優れもの。檜材は風呂や酒器にも使われ、香りが気持ちを鎮め、殺菌効果があり、いいことずくめ。
このところ、広大な松林が次々に伐採され、代わりにヒノキかコナラが植林されている。松林に松食い虫が発生すると、たちまち松を弱らせ、感染してしまうので、素早い処分が必要になる。いま大木になっている松は戦後に植えられたもので当時は松が多く利用され、そこそこの値段だったらしい。いまや新建材が使われ、松は利用価値が少なくなり、ヒノキを子々孫々に遺産として残そうとの思いがこの辺りの里山でも浸透してきたようだ。
悲しいかな、ヒノキ林は典型的な陰樹なのに対し、松は陽樹。ヒノキ林の林床は暗く、松林は明るい。ヒノキ林には山野草が育たず、里山のブラックホールと化す。時代に求められていない樹林が姿を消していくのはやむを得ないが、さびしい。ちなみにヒノキの葉裏の気孔線には白くY字形が連なっている。ここでサワラやヒバなどと見分ける。山のガイドが決まって教えてくれる。登山客は、ワイワイと喜ぶ。