「ごめん、今まだお昼ごはん食べとるの。母さんが用意するの遅くなったで。少し待ってて。」

外で友達を待つあいだ、道路脇の側溝に葉っぱを落として遊んだ。
友達の家から、うどん屋さんの出汁のような匂いがしていた。
(うどんか…。うちはカレーやったもんね)
お昼のカレーの美味しさを思いだしながら、その家の塀から、はみ出ている葉を無意識にちぎり続けた。

気づくと指先が少し緑色になっていた。
(クロロフィルや…)
学校で習ったばかりの知識で理解した。
青臭い指先の匂いを嗅ぎながら待っていたら、カラーペンを忘れたことに気づいて、慌てて家に駆け戻った。
机の引き出しからカラーペンを探してナップサックに入れて、大急ぎで、また友達の家に駆け戻る。

友達が私を探している姿が見えなかったので、焦って玄関チャイムを押そうとしたら「いってくるね」という友達の声がした。
(まにあった…)と私はホッとした。
玄関から出てきた友達は、出汁の匂いをさせて「ごめんね。」と言う。
「ええわ。カラーペン忘れんようにな。」と私が言うと、友達はリュックの中を覗き込んで、「入っとらんわ。」と慌てて二階に駆けあがっていった。