草いきれ立ちのぼり
呼気さえ喘ぐかのような夏日
僅かに　しどけなく咲く蓮の花
真白な花弁の色に古のひとは
聖なるものを見たとか

ハス科　ハス属
インド原産　多年生水生植物
日本では北海道～九州
原産地同様に池や湖沼の沿岸に自生
水芙蓉　不語仙　単に水の花など
いくつかの異名　漢名　蓮

春に地中の地下茎より発芽し
やがて水面に葉を出す
茎は空洞　草丈　約１m
蓮の葉は微細構造と
表面の科学的特性により
けして濡れることはない

葉についた水は
表面張力により中央に溜まり
泥や虫などの異物を
からめとりながら落ちる　これが
ハス科の植物にみられる自浄作用
ーロータス効果ー
(なお英名ロータスとは
エジプト原産地のスイレンの一種)

原産国インドては
紀元前　インダスのころより
土着の信仰に深くとりこまれる
『後を神の采配に委ね　自らの責に
勤しむならば　罪惑うことはない
あたかも蓮の葉が濡れぬが如く』
古代インドにおける聖なるものの
象徴とされた花は　仏教思想にも
いかんなく継承される

すなわち　
泥より出でて　泥に染まらず
花首をすっくともたげ
気高く咲く姿に
この世ならざるものを見たか
はたまた　このように生きねばと
清廉であろうとする人の志しか

日が落ちてなお
まとわりつく湿り気と暑気
眠れぬ夜の狭間に
葉影の揺らぎ　葉ずれの音
夏の夜の闇に幻惑の花が
見えはしまいか…

今日１日　お疲れ様でした。