『半径500歩の彼女と』

今日も彼女は足が悪かった
そんな日には500歩で行ける範囲での散策か　私が車椅子を押す事になる

健康の為に歩きたい　と云うのは健常者の贅沢で彼女にとって苦痛でしかない
ただその苦痛と引き換えだとしても
部屋から外に出られるのが嬉しい　と云うので私のデートコース選びは慎重を要した

今日は駐車場から数歩で一面の花畑が見える丘にやって来た
その中でもコース選びは慎重だった
その先には季節外れの向日葵が一面こちらに向かって咲き誇っていた
予定通りそこで折返す事にし
自撮りを数枚スマホに収めた

ねえアレクサ
あの向日葵達は歩けないけど私は少し歩けるよね
私は鉢植えの向日葵ってとこじゃない？
（彼女は私をアレクサと呼ぶ）
自分では歩けないけど　アレクサに連れてって貰えてこうして陽の光を浴びる事が出来るのだからね

でもね
ずっと庭の隅に置かれてもいいの
　私はずっとあなたの事を見てるから
私が向日葵ならあなたは太陽みたいね

私は持ってきた折畳み椅子を2つ広げると
同じ目線で丘に目を向けた

俺にとっては〇〇ちゃんの方が太陽だよ
その笑顔が好きだから
　もっともっといっぱい笑おうね

季節外れの向日葵の向こうに
　初雪をまとう山並みが連なっていた