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so.ra
【ピンクッション物語】第11話 それは2月の雪がちらつく冷え込んだ夜だった。塾の帰り、肉まんでも買おうかと美幸はコンビニに立ち寄った。 店員さんに注文しようとすると、 手に大きな荷物を持った、一人の年老いた男性が入ってきた。 あっ、ちょっと待ってください。 店員さんはそういうと、お爺さんの方に向かっていった。 すみません。マスクをつけてもらう決まりになってるんで、着けてもらえますか? あぁ、こりゃすみません。 マスクは紐が切れてしまって、捨ててしまったんです。それに、財布を忘れてしまって買い物ができないんです。 どうも道に迷ってしまって、道を教えてもらおうと立ち寄らせてもらったんですが。。 申し訳なさそうに話すお爺さんに、店員さんは続けた それなら交番で聞いてください。とにかく困りますから、マスクをされないなら、ご利用はできません。 そう言うと、行く手を遮るように男性の前に立ったので、お爺さんは、頭を下げると外に出ていった。 雪が降ってるのに、大丈夫かな? 美幸は急いで肉まんを受けとると、お爺さんの姿を探して外に出た。 道路を挟んで少し進んだ先にバス停があって、形ばかりの小さな屋根のついたベンチにお爺さんがポツンと座っていた。 コンビニの他に商店もなく、普段から人通りの少ない通りだった。雪の降る寒い日だったからなおさら人影もなく、小さな街灯だけがベンチとお爺さんを照らしていた。 傘もないのか。。 自分の持つ傘に目を落とすと、美幸はお爺さんに向かって歩いていった。 すると、バス停の横の道から、小さな男の子を連れた自分と同じくらいの年頃の女性が現れた。 女性は、お爺さんのそばのベンチに座ると話しかけた。 寒いですね。 一番早いバスもあと20分くらいしないと来ないみたいです。 雪の日は遅れるし。。こんな寒いところで大丈夫ですか? この町へ来たのは今日が二度めなもので、すっかり迷ってしまいまして。出先に肝心な財布も忘れてしまったものですから、バスが来たら運転手さんに道を尋ねようと思って待っております。 お爺さんの話を聞いて、それなら今度来るバスに乗って終点の1つ手前の駅で降りれば大丈夫と女性が伝えた。 さっきまで悲しそうな顔をしていたお爺さんは、嬉しそうに顔をほころばせた。 そうですか、それは良かった。 ご親切に有難うございます。 そう言って深々と頭を下げるお爺さんに、女性はバックを探ると何やら取り出した。 これ、コートなんです。 ビニールの安物ですが、今日は雪が降ってるし、風避けになるかもしれないから、良かったら使って貰えませんか? いやいや、そんなご厚意に甘えるわけには。なぁにすぐにバスが来ますから大丈夫ですよ。 そう言ってお爺さんは頭を下げた。 でも、バスを降りた駅からも歩かれるかも。何かあったらこの子と2人で羽織れるように、男物の大きなサイズなんです。本当に安物ですが、使って貰えたら。。 2人のそんなやり取りを隣で聞いていた男の子が、たどたどしい言葉で話し始めた。 おぅーじーちゃん かぜひーちゃうからだめ ちゃーんときくんだよ 真剣にお爺さんを見つめて、一生懸命話す男の子の言葉を聞くと、お爺さんは女性からコートを受け取った。 有難うございます。 見ず知らずの私に。。 ぼうやも有難うね。 ご厚意に甘えて使わせていただきます。そう言うと男性はコートを羽織った。 暖かいですなぁ。 本当に有難うございます。 そう言って男性は少し涙声で続けた。 実は、先日妻が救急車でこの町の病院に運ばれまして、受け入れ先がなくてこんな遠い病院に来ることになったんです。 結局回復せずにあっという間に亡くなってしまって、死に目にも会えませんでした。今日はその帰りなんです。すっかり道に迷ってしまい、店で聞こうと思ってもマスクがないと追い出されましてな、とうとう夜になってしまいました。雪もちらついて人通りもなくて聞くこともできずに困っておりました。 わしらは2人暮らしでしたから、頼れる人もなくて。。 お爺さんはそう言うと、言葉を詰まらせた。 女性は男性の話を聞くと涙ぐんだ。 この先にこの子が通う学校があって、さっき迎えにきた帰りなんです。教室が開いてたら、バスの時間まで待たせて貰えるように頼むんだけど、もう閉まっちゃったから。。 この辺は喫茶店もないし、寒いですがあと少し我慢してくださいね。 そんな2人の話を黙って聞いていた男の子が、女性の頭を引き寄せて何か内緒話をしたようだった。 だって、それお守りでしょう?いいの? こくりと男の子は頷いて、自分の鞄を差し出した。 そこには、小さな袋が下げられていた。女性は袋を外すと男の子に手渡した。中に入っていたのは、小さな黒い種のようなものだった。 あぅーげる おーまーもり そう言って、男の子は、ニコニコしてお爺ちゃんに差し出した。 これは、ぼうやの大切なものでしょう。気持ちだけ貰っておくよ。有難う。 お爺さんから返されると、男の子は泣き出した。 この子が誰かに何かをあげたいって言うのは、初めてなんです。そして、それはフウセンカヅラっていう花の種なんです。この子が通い初めた学校でみんなで育てたフウセンカヅラの種を、去年みんな一粒ずつ貰ったんです。種に♡のマークがあるからお守りだって、大事にしてたものなんです。 この子は、少し耳が不自由で言葉もはっきり話せないんです。だから、苛められる事が多かったけど、そのぶん人の心がわかるような所があって。 きっと、話を聞いていて、お爺さんのお守りになれたらってこの子なりに考えたんだと思います。この子にとって他人に何かをあげようとするのは初めての事で勇気を出したと思うんです。お邪魔かもしれないですが、良かったら気持ちを受け取って貰えませんか? そうでしたか、それはすまないことを。それでは、ありがたく頂戴しますよ。 お爺さんが手を差し出すと、男の子は嬉しそうに種を手渡した。 本当に♡のマークがついてるね。フウセンカヅラか、春になったら育て方を調べて見ようかな。ぼうや、有難うね。 そんなやり取りをしているうちに、バスが到着してお爺さんは、手を振って何度も何度もお辞儀をしながら乗っていった。 2人もお爺さんと同じバスに乗るのかと見ていたら、バスを見送ると女性は男の子の手をひいて反対方向へと歩きだした。 もしかして、お爺さんを心配して見守っていたの? 少し離れたビルの軒先で様子を見ていた美幸も、お爺さんがバスに乗り込むのを見届けると安心して、その場を離れ家へと向かった。 その時は、しばらくしてその女性と偶然再開するとは美幸は思ってもいなかった。 (続く) 🌺マホニアコンフューサ(細葉柊南天) 花言葉は「優しい暖かさ」です。 柔らかな細長い葉の優しい印象と、小さくて黄色い花が冬の寒さの中も、灯りを灯してくれるようです。 第11話の📍のテーマは、優しい暖かさです。
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